昨日(4月4日)、トランプ政権が2027年度の国防予算案を発表した。アメリカ宇宙軍(USSF)への配分は710億ドル(約10.6兆円)超となる見通しで、2026年度の約400億ドルから1.8倍近くに増加する。宇宙軍が創設された2019年の予算は150億ドルだったため、7年間で約5倍の規模となる。
この増加の大部分を占めるのが「ゴールデンドーム」向けの予算だ。
ゴールデンドームとは何か
ゴールデンドームが提案したような、宇宙ベースの迎撃ミサイルのグローバルな配置の視覚化
ゴールデンドームとは、アメリカ本土をあらゆるミサイルから防衛するための宇宙配備型ミサイル防衛システムだ。イスラエルの「アイアンドーム」が地上からロケット弾を迎撃するシステムであるのに対し、ゴールデンドームは低軌道に大量のセンサー衛星と迎撃体を展開し、弾道ミサイル・極超音速ミサイル・巡航ミサイルを宇宙から迎撃することを目指す。地上レーダーでは捉えにくい極超音速ミサイルも、軌道上のセンサーであれば発射直後から追跡できる。 総予算はトランプ大統領が発表した1,750億ドル(約26兆円)から、責任者の宇宙軍グートライン大将の発言ではすでに1,850億ドル(約28兆円)に修正されている。 また、システムの詳細はいまだ多くが非公開だ。議会下院の歳出委員会は「国防総省はゴールデンドームが何であるか、どう実施するか、実現可能かどうかを説明できていない」と文書に記しており、具体的な設計や運用方法は明らかになっていない。コスト試算も幅広く、アメリカ議会予算局(CBO)は完全なシステム構築に5,420億ドル(約81兆円)が必要と試算しており、トランプ大統領が掲げる1,850億ドルで何がどこまで実現できるかは不明なままだ。
参加企業
約2,400社がSHIELD契約の対象として認定されており、宇宙・衛星系の企業が重要な役割を担う。
SpaceXは低軌道に600機規模の衛星コンステレーションを構築し、ミサイルの追跡・標的化を担う契約(約20億ドル・約3,000億円)を受ける見通しだ。すでに運用実績のあるStarshieldプログラムがその基盤となる。
Rocket LabはSDAから追跡層衛星の製造契約を獲得しており、その総額は13億ドル(約1,950億円)を超える。2025年12月には18機の衛星を製造するTranche3契約(8億ドル)を受注し、ゴールデンドームのセンサー網を構成する衛星の製造を本格化させている。
L3ハリスは極超音速弾道追跡宇宙センサー衛星(HBTSS)の開発を手掛け、すでに試験機を軌道上に投入済みだ。ミサイルの追跡・識別という「目」の部分を全トランシェにわたって担い続けている。
ロッキード・マーティンはシステム全体の統合と迎撃ミサイルの開発を担う。Tranche3でも18機の衛星製造契約(11億ドル)を受注しており、主要コントラクターとして位置づけられている。
現在の進捗と今後
2026年度予算ではゴールデンドーム向けに約138億ドル(約2兆円)が計上されており、低軌道のミサイル追跡衛星・宇宙配備型迎撃システム・宇宙センサー網の研究開発に充てられる。アラスカの宇宙軍基地では長距離識別レーダー(LRDR)を使った弾道ミサイル追跡試験がすでに完了しており、センサー網の一部となる予定だ。 今後は2026年末に初期能力を配備、2028年末に最初の大規模試験、2029年末に初期運用能力を確立という3段階の計画が示されている。 このプロジェクトが宇宙産業全体に与える影響は大きい。数百機規模の衛星を継続的に製造・打ち上げ・運用するためのインフラ整備が必要となるため、ロケット打ち上げ需要・衛星製造・地上システムなど幅広い分野で民間企業への発注が増加する。Rocket LabやSpaceXといった企業が大型契約を獲得している背景には、こうした宇宙インフラの整備需要がある。日本も2026年3月の日米首脳会談でゴールデンドームへの参加を表明しており、衛星網の構築や迎撃ミサイルの共同開発を通じて宇宙産業での日米連携が一層深まることが見込まれており、今後の宇宙開発のさらに活発化が予想される。
参考文献
- SpaceNews「Space Force budget would more than double in Trump's $1.5 trillion defense plan」(2026年4月4日)
- DefenseScoop「SDA awards $3.5B across 4 contracts for next phase of missile tracking satellites」
- ビジネス+IT「日本政府、米国の次世代ミサイル防衛構想『ゴールデン・ドーム』へ参加」
- Aerospace Corporation「FY 2026 Defense Space Budget: Emergence of Golden Dome」

