日本時間4月7日、オリオン宇宙船はミッション最大のハイライトを迎えた。 午前2時56分、アポロ13号が1970年に打ち立てた人類の最遠到達記録(約40万170km)を更新。その後も距離を伸ばし続け、午前8時2分に月面から約6,550kmの距離まで最接近した。さらにその5分後、地球からの距離は約40万6,800kmに達し、人類史上もっとも遠い場所への到達記録を56年ぶりに更新した。
40分間の沈黙——月の裏側で通信が途絶えた
月への最接近前後、オリオン宇宙船は月の裏側に回り込んだ。月が電波をすべてさえぎるため、日本時間午前7時44分ごろから約40分間、地球との通信が途絶えた。 この間、クルーは地球からのいかなる支援も受けられない状態で飛行を続けた。不測の事態が起きても自分たちだけで対処しなければならない——アポロ計画の飛行士たちも経験したこの「無線の暗闇」を、人間が体験するのは半世紀ぶりのことだ。 コック飛行士は「月の風景に突然引き込まれる瞬間があった。月は本当にそれ自体が宇宙に存在する天体なのだと実感した」と語った。グローバー飛行士は太陽が月の後ろに隠れる瞬間を「太陽が月の後ろに消えた。コロナがまだ見えていて明るく輝き、月のほぼ全体にハローを作っている」と報告した。通信が途絶えていた40分間、クルーはメープルクリームクッキーを食べながら月の裏側を飛行し続けたという。 通信が復旧した際、4名のクルーは全員が無事であることが確認された。
人類の目が初めて捉えた「オリエンタル盆地」
/images/1775540513194.png オリオン宇宙船から撮影した月。左端に月の裏側の一部が見えている。(Credit: NASA)
通信が途絶えていた間も、クルーは月面の観測を続けていた。 今回のフライバイで主要な観測目標となったのが、月の地球側と裏側にまたがる直径約930kmの巨大クレーター「オリエンタル盆地」だ。約38億年前に巨大な天体が衝突して形成されたとされるこのクレーターは、これまで無人の月探査衛星によって撮影されたことはあったが、人間の目でその全体像を直接目撃したのは今回が初めてとなった。アポロ計画の飛行士たちも軌道の関係でオリエンタル盆地をはっきりと見ることができなかったため、これは文字通り「人類初」の光景だ。 そのほかクルーは月面の約35か所の地質的な特徴を観測し、クレーター・溶岩流・尾根などの様子をリアルタイムで地上の科学者チームに報告した。
今後の予定——次に人類が月を見るのは2年後
オリオン宇宙船は現在、月の重力を利用して進路を変え、地球への帰還軌道に入っている。帰還は日本時間4月12日ごろ、米・カリフォルニア州サンディエゴ沖への着水が予定されている。
今回のフライバイで人類が月の裏側を肉眼で見るのは半世紀ぶりだったが、次に人間が月をこれほど近くで見られるのは早くても2年後だ。2027年にはアルテミスIIIが地球低軌道でのドッキング試験を行い、その次のアルテミスIVで初めて有人月面着陸が実現する見込みで、現時点では2028年が目標とされている。今回得られたデータや経験は、月面着陸そしてその先の火星探査に向けた重要な蓄積となる。
参考文献
- NASA「Artemis II Flight Day 6: Lunar Flyby Updates」(2026年4月7日)
- テレビ朝日「宇宙船オリオン、月の裏側で人類史上最遠の地点に到達」(2026年4月7日)
- CNET Japan「アルテミス2飛行士、ヒト史上『地球から最も遠い場所』に到達」(2026年4月7日)
- NBC News「Highlights: Artemis II astronauts circle the moon」(2026年4月7日)

