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月探査

Blue Origin、月の砂から酸素を生成——「Air Pioneer」技術を発表

2026-04-15
Blue Origin、月の砂から酸素を生成——「Air Pioneer」技術を発表

2026年4月7日、ジェフ・ベゾスが設立した宇宙企業Blue Originは、月面の砂から呼吸可能な酸素を生成する反応装置「Air Pioneer(エア・パイオニア)」の開発に成功したと発表した。

月面を覆う砂や岩の破片をレゴリスという。レゴリスには鉄やチタン、シリコンといった元素が酸素と化学的に結合した状態で大量に存在しており、月の砂の中には取り出せていないだけで膨大な量の酸素が眠っている。


なぜ月面での酸素生成が重要なのか

画像

宇宙飛行士が月面で長期滞在するには、呼吸用の酸素とロケット燃料用の酸素が大量に必要となる。これまでその酸素は地球から持ち込むしかなかったが、地球から月まで物資を輸送するコストは1kgあたり数百万円規模に達する。

酸素を月面で現地生成できれば、輸送コストと輸送リスクを同時に削減できる。Blue Originの副社長パット・レミアス氏はこう述べている。

「月面で酸素を1kg生成すれば、地球から打ち上げなければならない分を1kg減らせる。これは月や火星へ輸送が不可欠な資源を削減するだけでなく、さらにその先への大きな一歩となる」


Air Pioneerの仕組み

画像実際の装置

Air Pioneerのプロセスは3段階だ。まずレゴリスを高温で溶融させて液体状にする。次にその溶融物を電気分解することで、金属成分と酸素に分離する。分離された酸素は生命維持システムに供給できる状態で回収される。

Blue Originはこのプロセスをキャッチフレーズとして表現している。

「Melt. Extract. Breathe. Repeat.(溶かす。抽出する。呼吸する。繰り返す。)」

この研究はBlue Originが2021年から進めてきた「Blue Alchemist」計画の一環として行われた。NASAからは約3500万ドル(約55億円)の資金提供を受けており、アポロ計画で回収された実際の月のレゴリスサンプルも実験に活用されている。今回の実験は月のレゴリスと同等の模擬物質を使用したもので、実際の月面での実証はこれからの段階だ。


Air Pioneerはいつ月に届くのか

Air Pioneerの月面実装に向けた具体的な打ち上げ時期はまだ発表されていない。ただしBlue Originは現在、月着陸船「Blue Moon Mark 1」の無人デモ機「Pathfinder」を2026年中に月面着陸させる計画を進めており、NASAの担当者もテスト飛行が今年中にある見通しを公表している。MK1はすでにNASAのジョンソン宇宙センターでのテストを終えフロリダに戻り、打ち上げ準備を進めている。

有人版の「Blue Moon Mark 2」については、2027年に地球低軌道での試験飛行、2028年のアルテミスIVで初の有人月面着陸を目指すスケジュールとなっている。Air PioneerはこのBlue Moon計画と連動する形で月面に持ち込まれる可能性が高く、実際の運用は2028年以降になると見られる。


今後の見通し

  実際の実験の様子 次のステップは装置の小型化と打ち上げ可能な状態への改良、そして実際の月面環境での実証だ。アルテミス計画が進む中、Air Pioneerが月面に届く日がいつになるかが注目される。月で「空気を作る」という人類の長年の課題に、Blue Originが具体的な答えを示しつつある。


参考文献

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