SpaceXは4月11日、スターシップ第12回飛行試験(Flight 12)に向けた最新の動向を写真とともに公開した。スーパーヘビー・ブースター19号機と上段機体のシップ39がそれぞれの試験場所へ移動し、いよいよ燃焼試験の直前フェーズに入った。
注目すべきは、ブースターとシップの両方が同時期にそれぞれの燃焼試験に向けた準備を進めているという点だ。通常、スターシップの開発試験はブースター側の準備が先行し、シップ側はその後に続くことが多い。両機体が並行してこのフェーズに入るのは異例であり、SpaceXが開発のスピードを極限まで上げようとしている姿勢がにじみ出ている。
ブースター19は33基のラプター3エンジンをすべて搭載した状態でパッド2へ搬入されており、史上初となる33基フルスタティックファイア(静止燃焼試験)の実施が目前に迫っている。一方のシップ39はマッシーズ試験場にあり、独自のエンジン燃焼試験に向けた準備を進めている。
V3エンジン
スターシップV3とは何か
Flight 12はスターシップの新世代機「V3」の初飛行となる。単なる改良ではなく、設計思想から刷新された世代交代だ。
V3スターシップは全高約124.4メートルとV2よりわずかに大型化しており、低軌道への最大ペイロードは100トン超に達する。V2の約35トンと比較すると3倍近い数字だ。
その核心にあるのが新世代エンジン「ラプター3」だ。ラプター3は1基あたり280トン力(tf)の推力を発生させ、前世代のラプター2が230tfだったのと比べると約22%の向上だ。33基搭載するブースター19が同時点火すれば合計推力は約9,240tf——史上最大の推力を持つロケットとなる。
これまでの試験経緯
移動中のシップ39
ブースター19は2月にクライオジェニック圧力試験を完了し、3月7日にパッド2へ搬入された。3月16日、パッド2で10基のエンジンを使った静止燃焼試験を実施。V3機体として史上初、かつパッド2としても初の燃焼試験だったが、地上設備側の問題で早期終了となった。全エンジンの起動確認自体には成功している。
その後、ブースター19は工場に戻り残る23基を追加搭載。4月11日に33基フル装備で再びパッド2へ搬入された。
シップ39は2月末から3月にかけて3回連続のクライオ圧力試験を完了。着陸時にメカジラ(タワーのキャッチアーム)が機体を把持する際の荷重を模擬する「スクイーズテスト」も実施された。
33基フル燃焼試験の意味
スタティックファイアとは、機体を発射台に固定したまま全エンジンを点火する飛行前の最終確認試験だ。10基試験は「新エンジンが正常に点火できるか」の確認だったが、33基フル試験では全エンジン同時燃焼時の機体・発射台への影響を検証する。推力9,240tf分の燃焼ガスと振動は、10基試験とは桁違いのスケールだ。
この試験が成功すれば、シップ39との合体(スタッキング)へ進み、打ち上げが射程に入る。
打ち上げは5月前半へ
マスクはXで「V3初飛行まで4〜6週間」と発言しており、打ち上げウィンドウは5月前半に設定されている。FAA(米連邦航空局)の飛行許可は取得済みで、残る関門はブースター・シップ両方の燃焼試験の成否だ。
Flight 12はスターベース新設の第2発射台(パッド2)からの初打ち上げでもあり、2基体制が整えば今後の打ち上げ頻度も大きく向上する。NASAの月面着陸船(HLS)としても採用されているスターシップにとって、Flight 12の成否はアルテミス計画の実現スケジュールにも直結する重要な試験だ。




