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有人宇宙飛行

アルテミスII、地球帰還——サンディエゴ沖に着水、4人全員無事

2026-04-11
アルテミスII、地球帰還——サンディエゴ沖に着水、4人全員無事

2026年4月11日午前9時7分(日本時間)、4人の宇宙飛行士を乗せたオリオン宇宙船がカリフォルニア州サンディエゴ沖の太平洋に着水した。9日間1時間31分、総飛行距離110万kmを超えるアルテミスIIのミッションが幕を閉じた。プログラム責任者のリック・ヘンフリング氏は着水後の記者会見で、乗組員全員が「元気で健康で、ヒューストンへの帰還を心待ちにしている」と述べた。1972年のアポロ17号以来、54年ぶりとなる有人月近傍飛行は、こうして完全に終わりを告げた。

帰還に向けた準備

画像宇宙船が地球に帰還するにつれ、地球はより大きく見えるようになった。

午前4時7分に最後の軌道修正噴射が実施され、サンディエゴ沖への着水経路が確定した。この噴射でオリオンの軌道が微調整され、着水地点へ正確に向かう態勢が整った。

午前6時、クルーはオレンジ色の船内宇宙服を着用してチェックリストの確認を開始した。この宇宙服は打ち上げ時にも着用したもので、船内の気圧が急激に低下した際に宇宙飛行士を保護する役割を持つ。緊急時には最大6日間の生命維持が可能な設計になっている。宇宙服の着用と並行して、クルーは船内の持ち物を固定し、帰還に向けた最終確認を進めた。

午前8時33分、乗員カプセルがサービスモジュールから分離した。欧州宇宙機関(ESA)が製造したサービスモジュールは飛行中に電力・燃料・通信を担ってきたが、この段階で役目を終え、太平洋上の大気圏に突入して燃え尽きた。分離の4分後、スラスタが8秒間噴射されて再突入角度が最終調整された。

大気圏への再突入

午前8時52分、乗員カプセルは高度122km以上で大気圏上層部に突入した。地球の重力によって宇宙船は時速約3万8,000kmまで加速しており、カプセル周囲の外気温は2,700〜2,800℃に達した。火山溶岩の約2倍に相当する温度だ。

圧縮された大気がプラズマ化し、カプセルを包み込むプラズマ層が通信信号を遮断。地上との交信は約6分間途絶えた。一方でカプセル内部は耐熱シールドが熱を吸収することで約24℃に保たれており、クルーへの危険はなかった。

今回は「ロフテッドエントリー」と呼ばれる特殊な飛行経路が採用された。2022年のアルテミスIで耐熱シールドに予想外の損傷が確認されたことへの対策で、大気圏での飛行距離を短縮してシールドへの熱負荷を調整する手法だ。取得した再突入データは今後のミッションの設計改善に直接反映される。

パラシュート展開・着水

画像パラシュートを開き降下するオリオン宇宙船

午前9時ちょうど、通信が回復した。高度約6,700mで小型の減速用パラシュートが展開し、続いて高度約1,800mで3つのメインパラシュートが順次開いた。合計11個のパラシュートシステムが機能し、カプセルの速度は時速約500kmから時速約27kmまで一気に減速した。

午前9時7分、オリオン宇宙船の乗員カプセルがサンディエゴ沖約130kmの太平洋に着水した。大気圏突入からわずか13分後のことだった。着水の瞬間、クルーには最大3.9G——体重のおよそ4倍の力がかかっていたが、設計の範囲内であり問題はなかった。

回収

画像ジョン・P・マーサに空輸されたワイズマン指揮官(左)とハンセン宇宙飛行士を迎える、NASAのアイザックマン長官(右)

着水から約1時間後、救助艇がカプセルに接近し、4人の宇宙飛行士を順次救出した。クルーはヘリコプターで揚陸艦「ジョン・P・マーサ」に移送され、初期の医療チェックを受けた。9日間以上の無重力環境にさらされた体は地球の重力に慣れるまでに時間を要するため、医療チームは着水前から回収艦で待機していた。その後クルーはヒューストンに移動し、詳細な身体検査と任務報告に入る予定だ。

参考文献

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